マーケティング

営業を代行会社に委託・外注するメリット・デメリット

営業を代行会社に委託・外注するメリット・デメリット

 仕事の生産性のアップや効率化を計るため、社内の業務の一部をアウトソーシングすることは一般的に行われています。そして、今では様々な業種・業態でアウトソーシング業務の請負を専門とする業者が存在しています。これらの業者は、自社のリソースの足りない箇所を補ってくれる有難い存在なのですが、その使い方には注意が必要です。特に営業業務を委託する際には、事前の綿密な計画を立てておかなければ十分な成果を得られないばかりか、返ってコスト増を招いてしまう結果に繋がりかねません。

 ここでは、数あるアウトソーシング業務の中の「営業代行」にフォーカスし、利用するメリット・デメリットや具体的な活用方法について考えてみたいと思います。

 

1.営業代行業者を利用するメリット

  • 専門性の高い営業スキルを持った人材を活用できる。
    自社にない営業のスキルやノウハウを持った人材を活用することで、新たな市場やターゲットにアプローチできる。
  • 適材適所への必要な人員の配置や、人件費など調整がつけやすい。
    外部に委託することで不足している人員を補い業務が効率的に遂行できる。
  • 新規お客様獲得コストを見える化できる。
    自社で直接雇用している営業スタッフでは個々の業務の範囲が多岐に渡ることが多く、新規客獲得だけに特化した営業活動を行えないため、新規お客様獲得にかかるコストは算出しづらくなります。新規お客様獲得業務を外部に委託することで1件あたりの獲得コストを見える化できます。

 

2.営業代行業者を利用するデメリット

  • 自社で直接雇用する場合と比較してコストの割高感がある。
  • 営業活動で得られるノウハウや経験値などを資産として社内に蓄積できない。
  • 効果的な使い方(活用の仕方)を提示しないと上手くいかない。
    例えば、テレアポなど見込み客獲得だけに業務を委託する範囲を絞るなど、業務の中のどの部分を委託するのかを明確にする分業設計が必要です。
  • 見込み客獲得業務を委託した場合、成約に至らないような見込み客であっても成果としてカウントされてしまう。
    業務を委託する際に、どのようなターゲットが見込み客として望ましいか。集める見込み客の条件を事前に定義しておかねば無駄なコストばかりが増大してしまいます。ただし、どのようなターゲットが見込み客として相応しいのかを決定するためには、営業活動全体の戦略設計と最適化が必要です。戦略設計ができていない状況でアウトソーシングをしても期待する成果はまず見込めないでしょう。

 

3.セールス(営業・販売)とマーケティングの違い

 上述したように、営業代行を委託することにはメリットもデメリットもあります。これらを理解したうえで営業代行業者に委託するためには、そもそも論として「セールス(営業・販売)」と「マーケティング」の違いを把握しておく必要があります。普段、曖昧に使われることの多い「セールス(営業・販売)」と「マーケティング」には、単に言葉の違いだけではなくその定義自体に明確な違いがあります。ここでは、それぞれの定義の違いを理解しやすいよう、「マーケティングミックス4P」という概念を用いて説明していきます。

マーケティングミックス4Pとは、企業が行う活動を4つのマーケティング領域に分けたフレームワークの一つです。4つの領域は、商品(Product)、価格(Price)、流通(Place)、販促(Promotion)で構成されます。
具体的な内容は以下の通りです。

  • ターゲットとなるお客様のニーズに対応した「商品」を開発する。
  • 商品に最適な「価格」を設定する。
  • 商品を提供するための最も効率的な「流通網(販売方法)」を構築する。
  • 商品を販売するうえでの最も効果的な「プロモーション」の施策を展開する。

 企業はこれら4つの領域を踏まえ、商品・サービスの販売戦略を立案していきます。

 図のように、セールス(営業・販売)は、マーケティング領域の一つである販促(Promotion)の一部として位置付けられます。詳しくは後述しますが、販促(Promotion)には、イベント、キャンペーン、セミナー、ウェブサイト、広告、メルマガ、DM、SNS、カタログ・パンフレット、パブリシティなどの施策が含まれ、主な目的はターゲットの興味・関心を引き出すことです。そして、これらの施策で集めたターゲットを最終的な購入へと導くことがセールス(営業・販売)の役割となります。

マーケティングミックス4P図

 このようにセールス(営業・販売)は業務そのものが独立した存在ではなく、一連のマーケティングプロセスの一部として定義されています。

 

4.営業成果を上げるには役割分担の明確化が必要

 セールス(営業・販売)がマーケティングの一部に属していることが理解できたところで、これからは、営業の成果を上げるための具体的な方法に踏み込んでいきたいと思います。
まず前提として、営業の成果を上げるためにはムダをできるだけ排除する必要があります。そのためには、まずどの部分の効率が悪くムダがあるのかを見極める必要があります。
一般的な中小企業など、専属のマーケティング部門を持たない企業の場合では、営業部門が企画の立案や見込み客の獲得などマーケティングのすべての工程を一人の営業マンが行っているケースが少なくありません。

 しかしながら、今ではこうしたやり方自体が効率性やコストの面から見ても時代にそぐわなくなってきています。なぜならば、見込み客となるターゲットは、インターネットなどを利用し必要な時に必要な情報を入手できるため、特に営業マンから直接情報提供を受ける必要性がなくなっているからです。特に、取引のない企業への新規開拓において、飛び込み営業やテレアポなどによる見込み客の獲得の非効率性はより顕著です。実は、日々の営業活動の中には、いくつものムダが存在しているのですが、習慣化されているため中々気付くことが出来ないようです。

 こうしたムダを排除するには、一人の営業マンが担っていた一連の行動を細分化し、どの段階の効率が良くないのかを明らかにしていきます。細分化することで、一人の営業マンがすべて行っていた役割が明確になり、継続すべきところと担当を変えた方がいいところが見えてきます。そうして、見えてきた役割の中の効率的な部分だけを集中して分担することで、営業成果は上がっていきます。

 役割分担を考える際、マーケティングのプロモーションプロセスを野球を例にするとわかりやすいでしょう。
現代野球では、先発投手が完投するケースは少なくなってきています。「先発」から「中継ぎ」、「抑え」というそれぞれの役割が分担されており、チームを勝利に導くためには投手のリレーは必須です。この投手リレーを営業の各段階にあてはめると、「先発の役割=興味を引くこと」「中継ぎの役割=信頼形成」「抑えの役割=クロージング」に分けることができます。

マーケティングフロー

 さらに付け加えれば、先発の役割である「興味を引くこと」の段階は「広告」「DM」「パブリシティ」といったマーケティングの施策に該当します。よく見られる「詳しくはウェブで」といったように興味をもたせ、「この商品・サービスをもう少し知りたい」と思わせるような役割を担います。今までは、これを営業マンが直接行っていましたが、その役割はバトンタッチするべきでしょう。

 中継ぎであるウェブサイトの役割は、先発が興味をもたせ誘引したターゲットにアプローチすることです。ウェブサイトでより詳しい情報を提供することで信頼を形成し、より購入へと近づけていきます。この中継ぎの役割も営業マンからバトンタッチします。

 そして最後に、抑えであるリアルな営業マンが登場します。見込み客との信頼が醸成された状態で初めてセールスを行い、契約のクロージングをします。もちろん状況によっては営業マンが直接先発や中継ぎの役割を担うケースも出てくるでしょう。しかし、ここで重要なことは、人が直接行う非効率な業務はなるべく避け、人が必要な役割へと業務をシフトしていくことです。

 かつては優秀と言われる営業マンは自ら「先発」「中継ぎ」「抑え」もこなしていましたが、そうした属人的な方法では会社全体の売上を維持することが難しい時代になっています。すべての営業活動を営業マンが担うのではなく、役割分担を明確にし適材適所に人員を配置することが結果的に営業成果の向上に繋がります。そして、営業の効果性を高めるために最も重要なことは、営業活動をマーケティングの観点で細分化し全体最適化することです。

 

5.営業代行業者を有効活用する方法

 営業活動のムダを排除し効率よくするには、数字を見える化しておくことが重要です。その中でも、顧客獲得単価(1件の契約を獲得するために掛かった単価)や見込み客獲得単価(1件の見込み客獲得に掛かった単価)は、会社の収益率に直接影響してくるため常に把握しておくべき数字です。単価だけを把握するのではなく、顧客獲得に掛かったコストの内訳も掴んでおけば、どこの部分にムダがあるかが見えてきます。
営業活動の役割分担の中でボトルネックとなっている部分を特定し、ボトルネックがわかれば、次にそれを解消するための全体最適化を行います。

 例えば、今まで営業マンが行っていた見込み客獲得の部分にコスト的なボトルネックが見つかった場合、その部分を改善し営業活動全体のコストが下がるように最適化します。そうして全体最適化する中で、見込み客獲得部分を営業代行業者にアウトソーシングするという活用方法は有効的です。営業代行業者に委託することで、今まで数値化しにくかった見込み客獲得コストを見える化できるメリットがあるからです。一定の期間試した結果が良好ならば続ければいいし、もし返ってコストアップに繋がるのであれば別の方法を模索します。

 一番やってはいけないことは、全体最適化を考慮せず闇雲に業者に依頼してしまうことです。そうなれば営業活動に対するコストマネジメントができなくなるばかりか会社全体の収益にも悪影響を及ぼしてしまうことになります。営業代行業者に委託するには、営業活動全体の役割分担を明確にし全体のプロセスを設計し最適化する。このことを常に肝に銘じておく必要があります。

 

6.まとめ

営業代行業者に委託する前にやるべきことは、

  • 自社の営業活動全体のプロセスを細分化し、ボトルネックとなっている部分を見つけ出す。
  • 役割分担を明確にし、ムダを排除する
  • 営業コストを見える化し、全体最適化を行う
  • 闇雲に業者に依頼せず、自社の状況に応じて有効活用する

以上のようなことを、理解したうえで営業活動を行えば全体の効率性が上がりコストダウンに繋げることも可能になります。営業代行業者に委託を検討する前に、自社のケースでどのような活用の仕方をすれば効果が出るかを一考してみてください。

 

 

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